この話は大人向けになります。
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「ただーいまぁぁぁぁ」
「す、進さん、大きな声は近所迷惑ですから……!」

 時刻はもうすでに深夜を過ぎている。玄関先に転がり込むように入ってきた夫を、はるは急いで抱き起こした。
 いつもは穏やかで静かな彼が、妙に明るく感じたのは相当酒を飲まされたからだろう、その口からは酒の匂いが零れていた。
 困ったように溜息を付くと、玄関の扉が再度開き今度は進の友人である三治が入ってきた。
 進と違い、しっかりとした足取りの彼を見ると、はるは思い切り眉をしかめた。

「進さんをこんなに飲ませたのに、三治さんは何でそんなに平気そうな顔をしてるのよ」
「別に俺が無理やり飲ませたわけじゃないぞ。俺らにもつきあいってもんがあるんだ。ほれ、旦那の鞄」

 嫌そうな顔をしながらも、三治はしっかりと進の鞄を運んでくれたようだった。勿論、酔っ払った進を家まで連れ帰ってくれたのも彼だろう。
 はるは、慌てて三治に礼を言うと、腕の中の進がなにやらぶつぶつ呟き始めた。

「ああほら、こいつまた大きな声出すだろうから早く中へ連れて行けよ」
「あ、うん。三治さん、本当にありがとう。あ、お茶でも飲んでいく?」
「いや、こんな時間だし遠慮しとく。……お前、もうちょっと考えて喋った方がいいぞ」
「え?」

 意味深な言葉に首を傾げると、今度は進が唸りだした。慌てるはるの前で、三治は軽く手を上げて玄関の扉から外へと出て行った。
 それを見送ってから、はるは進を廊下へと引っ張り上げて寝かせ、それからまた玄関の鍵を閉めに戻るために進の傍を離れようとした。

「……どこへ、行く?」
「え?」

 低い声が聞こえ、酔って前後不覚になっていたはずの進がすっと目を開け、その瞬間はるの胸は大きく飛び跳ねた。
 いつもは穏やかな目が、怜悧な刃物のように鋭く尖っている。それは久しぶりに見る彼のもう一つの姿でもあった。

「すす、む、さま……」

 思わず昔の敬称を付けてしまい、進の目はそれを咎めるように更にきつく光った。
 しまった、と思った時にはすでに遅く、はるの体は軽々と彼に抱き上げられた後だった。

「進様、何を……んぅっ」

 咎めようと出た言葉は重ねられた唇に吸い取られ、形をなさずに消えていく。
 口内に彼の酒気が流れ込み、はるは思わず咽た。

「静かに。母さんが起きてしまうだろう」
「……っ!」

 本当に酔っているのかと疑いたくなるぐらい冷静な進の言葉に、はるは動きを止めた。この家は彼ら二人だけが住んでいるのではなく、進の母親である文子も一緒なのだ。
 この時間彼女はすでに眠っている。これ以上騒げば、彼女を起こしてしまうことになるだろう。
 観念したはるを見下ろしながら、進はにやりと口の端を上げてもう一度唇を重ねた。そのまま一階の奥にある夫婦の寝室まで運ばれ、進を待ちながらひいた布団の上に下ろされた。

「進様……」
「ほら、まただ。お前はいつになったら俺の妻になるんだ?」
「そ、そんな、私は……」
「妻だと言うのか? 夫を敬称で呼び、他の男を追おうとするその態度で?」
「あ、あれはただ鍵をかけようと……! あ、鍵! す、進様、玄関の鍵を閉めてないんです、行って来ないと……!」

 警察官の家に泥棒が入るなどあってはならないことだ、と進が常々言っていた言葉でもあるのに、今日の夫は聞く耳をもたない。
 警察官の妻として、鍵の重大さを思い出したはるが体を起こしかけたが、当の警察官がそれを阻止するように、はるの手を布団へと縫いつける。

「行かせない」

 進が酔うことは珍しい。一度だけ、はるがまだ宮ノ杜の使用人をしていた頃にこうして酔って帰ってきたことはあったが、それ以降彼がここまで酔ったことはなかった。
 それに以前酔って帰宅した時はこんなに厳しい顔はせず、ただひたすらに騒いでいたように見え、今回のように人が変わったような感じはしなかった。

「お前は……まだ三治のことが好きなのか?」
「は? え、私がいつ三治さんのことが好きだなんて……んっ」

 質問をするくせに、はるが答えようとすると唇を塞がれて言い訳を止められる。
 厳しい瞳の彼は、以前三治に銃をつきつけていた彼と同じようで、はるの背筋は冷たくなった。
 どうすればよいかわからずただされるがままになっていると、進の手が次第にはるの夜着を暴いていった。

「進様……あ……」

 夜毎進に愛されてきた体は、彼の手が肌を滑ると即座に反応を返す。いつもと違う彼の様子に心は戸惑っているというのに、体だけが切り離されたように自分の意思を裏切ることに、はるは悲しくて唇を噛み締めた。
 
「唇を噛むな。切れたらどうするんだ」
「あ……」

 唇の上に指を乗せられて口は自然と開く。それを見計らってか、進の唇がそこへ降りてきて開いたままの咥内へ熱い舌がするりともぐりこんだ。
 口の中はおろか器官にまで酒気が入り込み、はるの体は酔ったように熱くなっていった。酒を嗜まないはるにとって、進から口移しで与えられる酒精は耐えられるものではなかった。
 しかし、そんなはるにはかまわず進の愛撫は更に激しさを増す。
 いつもよりも荒い手つきで胸を揉みしだかれ、小さな胸は進の手の中で形を変えていき、その先端はすぐにも固く尖ってきた。
 親指でそこを刺激されれば、はるは耐え切れなくなって太腿をすり合わせると、進は見逃さずにそこへ手を差し込んできた。
 
「あ、う……はぁっ」
「ああ、ここももう濡れてきているな。気持ちがいいんだろう?」
「いや、言わないで……ください……」

 股を割った指先はその奥をこじ開け、音が出るほどに滴っている液体をかきだしていった。
 進の長い指が膣の中に差し込まれる異物感は、じわじわとはるの体に官能の炎を宿す。
 いつもならば、優しくはるの気持ちを考えて事がすすめられるというのに、今日ははるの心はどこか遠くへ置き去りにされていた。
 どこまでも熱くなる体に恐怖を覚えたその時、胎内に差し込まれた指がすっと抜かれる。
 苦行のように続けられた愛撫が終わったのだとほっとした時、今まで指のあった場所に濡れた何かが触った。

「え、うそ、いや、嫌です、進様、やめ、やめて……あ、あぁぁぁっ!」

 はるは信じられない光景に目を見張った。
 大きく開かされた自分の下肢の間に何かが入り込んでいる。それが進の頭だとわかると、はるの頭は沸騰しそうなほど羞恥に染まった。
 熱く湿った舌が、奥の方まで伸ばされては蜜を啜り取る。自分の体内かた聞こえる淫猥な水音に、はるは思わず耳を塞ぐ。
 
「進さま、やめて、やめてくだ……恥ずかしい、こんなの、いや……っ」
「ふっ、恥ずかしいなどと言っても、ここはこんなに濡れている。ほら、素直になったらどうだ?」
 
 蜜を零す中心に口づけを落とされ花芽を指で弾かれると、はるの体は大きく震えた。
 脳髄を痺れさせる快楽は同時に背徳感をも備えていて、目尻からは涙が零れ落ちる。
 そのまま体を布団の上にうつ伏せにされ、腰を持ち上げられると、驚く間もなく熱いものが溶けかけた蜜口に宛がわれた。それが何なのかは、見なくてもわかり、はるは思わず息を飲んだ。
 ぐちゅりと果実が潰されたような音をたてながら、進が中へと入っていく。
 いつもより熱く大きく感じるのは、彼が酔っているせいだけではないだろう。
 
「ああ……ん、ぅ……」

 限界を超える質量に呻くと、進ははるの背中に体を寄せた。背に感じる冷たい服の感触は、今の二人の心の距離を現しているようで悲しさが増す。
 
「はる……」
「……進、さま……?」

 切ない声に顔を上げると、すぐさま進の腰が打ち付けられる。
 肌のぶつかり合う音に混じり、二人の繋ぎ目から溢れる液体の粘着質な音が響く。
 はるの目の前に見えるのは、染み一つない新居の壁だけで、体は繋がっていても夫の心はひどく遠く感じた。

「進様、このままは嫌……」

 涙を流して懇願すると、中に自身を入れたまま進ははるの体をぐるりと回した。
 衝撃に耐えながらも、はるは進の顔を間近に見られたことと、ようやく慣れてきたいつもの体位にほっと息をついた。
 しかしそれも束の間、進はまたしても腰を大きく引き行為を再会させ始める。
 置いていかれそうになる意識を奮い立たせ、はるはきっと顔をあげた。

「進様、好きです……わ、私、あなたが……あなただけが、好きなんです……!」
「はる……」

 途切れそうになる言葉を何とか紡ぎ合わせてそう告げると、その瞬間進の目は大きく見開かれ、いつもの彼らしい瞳の色が垣間見えた。
 手を伸ばし進の体を抱き寄せると、はるは自らの足を彼の腰に絡ませる。

「どんなあなたでも、大好きです、愛してます……」
「はる……くっ……!」

 甘く痺れる体の奥深くで、進が大きく身震いして弾けたのを感じる。
 注がれる名前のない愛情を身の内で味わいながら、はるはうっとりと目を閉じる。
 
「はる……はる」
「進様、ん……好き……」
 
 行為が終わっても、進ははるの体を開放しようとはしなかった。ただ、先程までの険しさはそこにはなく、いつもの彼のように優しく抱きしめられ、はるはその身を委ねた。
 重ねるだけの口づけを交わしながら、はるの思考は眠りに溶けていこうとしていた。穏やかになった彼の口づけに安堵の溜息を漏らした時、不意に自分の中に入ったままだった進の分身が質量を増したように感じた。
 
「……まだだ。こんなもので終われるわけがないだろう?」
「進様……やぁ、中で大きく……っ」

 酔いが冷めたとばかり思っていた進は、再び怜悧な炎を瞳に宿らせて荒々しくはるの唇を奪い、腰を揺らした。
 どちらとも区別のつかない体液を混ぜ、淫猥な水音を響かせながら再び進の腰が振り下ろされる。
 その甘い痛みに頭を痺れさせながら、はるはカーテンがの向こうが薄っすらと明るくなるのを見つめていた。




「頭が……痛い」

 進は割れるように痛む頭を抱えながら、職場への道を急いでいた。
 今日は起きるのが遅くなってしまい、彼らしくもなく遅刻寸前だった。いつもならば彼よりも早く起きているはずの妻は、何故か今朝は青い顔でぐったりと布団の中で眠っており、同居している母も今朝は進の顔を見るなり悲しそうな表情を浮かべていた。
 昨夜の記憶はまったくないが、、一体自分は何をしでかしてしまったのだろうか。
 酒で前後不覚になるなど自分の身に起こったこととは到底思えなかったが、それでも以前同じようなことをした覚えがあるので否定も出来ない。
 
「参ったな……」

 溜息をつくと、それもまだ酒の匂いが残っているようで思わず顔をしかめた。

「……おい」
「え?」

 不機嫌な声で顔を上げると、そこには見慣れた顔があった。
 普段ならばここまで接近される前に気付くはずなのに、今日はやはり不調なのか相手の表情が見て取れるほどの距離になるまで気付く事が出来なかった。
 進は奥歯を噛み締めながら、改めて昨夜の失態を悔いた。

「おい」

 もう一度、相手――御杜守が声をかける。そこで進は初めて、彼が殺気を纏っていない事に気付いた。
 さすがに殺気を出されていれば、いかに進が二日酔いであってもここまでの接近は許さなかっただろう。
 しかし、こうも不機嫌な顔をしているのに、どうして殺気はないのか。
 内心首を傾げていると、守は盛大に嫌な顔を返した。

「お前、警察官ならばきちんと家の施錠ぐらいしろ。こそ泥が入ろうとしていたことを知っているのか。ったく、何で俺がこそ泥退治までせねばならんのだ。大体、お前は無用心すぎる」

 説教のように文句を言う守の言葉に、進の脳裏に玄関の戸を閉めると言っていたはるの言葉が蘇った。そしてその手を自分自身が止めたような記憶も、うっすらと存在する。
 
「……もしかして、うちに入ろうとしていた泥棒を捕まえてくれたのか?」
「ち、違う! そういうわけではない! 大体、お前は危機感というものが薄いのではないか? 警察官ならば……」

 顔を赤くしながら怒鳴る暗殺者をぼんやりと見ながら、進は静かに目を閉じた。
 やはり酒は当分控えた方が良いだろう。自分がしでかしたことはわからないが、今はまだそれを聞く勇気が持てなかった。

「おい、聞いているのか!」

 暗殺者の説教が、青い空と進の頭にへと大きく響いた。