ちゅんちゅん、ちゅんちゅん。
うるさいぐらいの鳥の鳴き声が聞こえる。
鈴花は、まだ覚醒しきれない頭を無理やり起こし、布団から抜け出した。
襖の向こうから漏れる光は明るく、今日も天気が良さそうなことを悟る。
そっと襖を開けると、鳥の鳴き声はさらに大きくなった。
その尋常ではない音に、重かった瞼はしっかりと開く。
襖の向こうでは何が起こっているのか。
確かめるのは怖かったが、このままでいるのも更に怖い。
意を決して、すぱんと勢いよく開けると。
「やあ、桜庭さん。おはようございます」
呑気な朝の挨拶が、鈴花を出迎えた。
「え、あ、お、沖田……さん?」
そこにいたのは、沖田総司。
薄い色の髪の毛は朝の光を受けて一層柔らかく見え、涼やかな笑顔は朝に相応しい。
刀を持っていない彼の姿は、ただひたすら爽やかで、朝の風景に綺麗なほど溶け込んでいた。
――ただ、その周りものを除いては。
「……あの、沖田さん、それ……どうしたんですか……?」
彼の周りには、鳥の姿があった。
先程から聞こえていたのは、きっとこの泣き声だったのだろう。
動物にやたらと懐かれる体質であろう沖田は、例に漏れず鳥にも好かれているようだった。
鳥と戯れる姿、それだけを見れば、微笑ましい光景だったのかもしれない。
ただ、問題なのは、その数。
数え切れないほどの鳥が、沖田の周りに群がっていた。
いや。
たかっていたという方が正しいのかもしれない。
「いやぁ、餌をあげてたらこんなに集まっちゃったんですよ」
あはは。
爽やかなその台詞に、鈴花の背は寒くなる。
どれだけの餌をやれば、そんなに集まるのか。
沖田の周りには、雀や烏といったその辺にいる鳥から、鳶や鷹のような大きなもの、何処から逃げてきたのか、鶏の姿まであった。
いや、それだけではない。
青や赤、黄色といった珍しい色を纏った異国の鳥。
鈴花の姿を見て、大きな羽根を広げて威嚇する見たこともない鳥。
果てには、人の言葉を喋る鳥までが、そこには存在した。
「どんな餌をあげたら、こんなに集まるんですか……てか、こんなにいっぱい鳥がいたら困るじゃないですか……」
呆然と呟く鈴花に、沖田はにっこりと微笑んだ。
「鳥がいて困ることなんて、何もないじゃないですか。使い道は色々ですよ」
使い道?
寒くなった背筋が更に凍り、沖田の視線をそっと辿る。
「……!」
「朝ご飯の時間ですしね」
縁側の下には、無数の猫の姿。
さらには、刀ではなく、包丁を持った隊士の姿。
「……た、食べる、気……ですか……?」
「あはは。どうでしょうねぇ。隊士が増えて、給金も大変だと土方さんも言ってましたし、役に立つといいですよねぇ」
……売る気もあるんですね……。
にこやかな笑顔に、黒い影を見ながら、鈴花の新しい一日が始まった。
昼にススム
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桜庭鈴花、非番の一日
〜朝の風景〜